人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)

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人工知能美学芸術展 記録集
Artificial Intelligence Art and Aesthetics Exhibition - Archive Collection

  • 【概要】
    • 「人工知能に美意識は芽生えるか」をテーマとして2017-18年に沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催された「人工知能美学芸術展」は、美学を基軸とした大規模総合芸術展としては世界初の人工知能(AI)アート展であった。本書はその単なる記録集にはとどまらない斬新な考察と、2019年までの最新の知見を加えた濃厚な内容から、「機械美学/機械芸術」を待望する。
  • 【基本情報】
    • 編・著・発行:人工知能美学芸術研究会
      日英バイリンガル/B4判(大型書籍)/176頁/カラー図版多数
      発行日:2019年12月15日
      ISBN: ISBN978-4-9902903-7-5
  • 【説明】
    •  人工知能は芸術創造の分野にまで侵蝕するのか。
       人工知能に美意識が芽生え、自律的に芸術を創作する未来はあり得るのか。

       「人工知能美学芸術展」は、人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)と沖縄科学技術大学院大学(OIST)が主催し、ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センターと協働して、2017年11月3日から2018年1月8日までの67日間、OISTにて開催した展覧会の名称である。同展は人工知能(AI)をテーマとした総合的な芸術展で、34項目の美術展示のほか、4つの音楽コンサートや8回の研究シンポジウムを含み、美学とういう観点を前面に打ち出した大規模な展覧会としては世界初であった。本書は2016年に設立されたAI美芸研が2019年に編纂した、日本語と英語のバイリンガルによる、同展の記録集である。

       展覧会の趣旨は、冒頭の2行と以下の文面であった。再掲する。
      「2016年3月、囲碁は芸術であると語っていた世界トップ棋士が人工知能に敗退した。かつてなら荒唐無稽でしかなかった冒頭の問いは、深層学習法などが飛躍的に発展しつつある今、現実味が全くないとは言い切れなくなった。とはいえ現今の“人工知能が創作した芸術”とされているものは、そのほとんどが、人間が人工知能という道具を使って制作した代物でしかない。だが逆向きに言おう。それがまだ先のことだとしても、今から我々は、人工知能が真の意味で美学を創発し、芸術を創作する事態に備えるべきである。なぜなら知能とは何か、芸術や美や人間の尊厳とは何かが、人工知能という要因によって根底から問い直されざるを得なくなるからだ。
       本展は2017年時点でのそうした問題意識の現れとして、国内外の表現者や研究者による人工知能をテーマとする芸術の現在を垣間見せるものである。視覚芸術分野を中心に、音楽、文学、コンセプチュアルアートから、広く知能を問う研究発表までも含める。」
       本書を編纂している2019年現在においても、私たちAI美芸研の基本的立場は変わらない。それどころか、本展開催と、その後の研究会開催等の活動によって、いっそう強化され深化され、洗練されたと言うべきである。その詳細については、記録集の体裁を取りながらも2019年時点の考察を随所に盛り込んだ、本書の内容に直接あたって頂ければ幸いだ。

       本書の構成は、大きく「美術/展示」の章、「音楽/コンサート」の章、「研究/シンポジウム」の章を設け、そのあとには「メディア」の章として、展覧会に関連して書かれた文章や記事等を翻訳付きで再録した。その中には、学会誌『人工知能』2018年11月号(Vol. 33 No. 6)の特集「AIと美学・芸術」からの4点が含まれる。同特集は、同誌編集委員の高橋恒一と当会とで、編集を担当したものである。
       また、本展の特徴の一つである総合性の表れとして、同一人物がアーティストとして展示を行い、研究者としてシンポジウムに登壇したケース等が少なくない。頁間の連携は本文内に記載されているほか、右下と左下のノンブル脇にも表示した。さらに、展覧会期中に撮影された展示やコンサート、シンポジウムの動画はインターネットで公開されている。それらのサイトへの直接または間接のリンクは、本文中にQRコードで表示した。本書にお手持ちの携帯をかざし、沖縄の実際の会場の様子やコンサートのライブ感、討論の熱い空気にテレポーテーションしながら、読み進めることができる。
       本記録集編纂にあたっては、展覧会に参加した作曲家や研究者から新たに寄稿を頂き、または講演要約の掲載に御理解を頂いた。
  • 【目次】
    • ■美術……007
      美術/展示 人工知能美学芸術展……008-009
      01(Ⅲ)マイク・タイカ《Die Ankunft》《Redshift》《Neighborhoods》《Surrender》……010-011
      02(Ⅲ)栗原 聡《DQNによる交通信号機制御》《多段創発アーキテクチャ》……012-013
      03(Ⅲ)畒見達夫《計算機が創作した進化的抽象動画からの計算機による選集 #1》……014-015
      04(Ⅳ)齋藤帆奈《ノン-レティナ キネマトグラフ》……016-017
      05(Ⅱ)松川昌平+archiroid《トポロジカル・グリッド》……018-019
      06(Ⅱ)三輪眞弘+小笠原則彰《二人だけのまたりさま人形版》……020-021
      07(Ⅲ)やんツー《落書きの原理について》……022-023
      08(Ⅳ)人工知能美学芸術研究会《人工知能美学芸術宣言》……024-025
      09(Ⅳ)中ザワヒデキ文献研究《人工知能美学芸術年表》
      10(Ⅳ)人工知能美学芸術研究会《第1-8回AI美芸研記録》……026-027
      11(Ⅱ)ブライアン・ワイチン・チュン《半百 . 半白》……028-029
      12(Ⅱ)UCNV《Datapoem》《Turpentine》……030-031
      13(Ⅱ)コンロン・ナンカロウ《自動演奏ピアノのための習作》……032-033
      14(Ⅱ)皆藤 将《【アートw】芸術アンドロイドに滝行させてみた!》……034-035
      15(Ⅱ)中ザワヒデキ《三五目三五路の盤上布石絵画第一番》《第二番》《第三番》……036-037
      16(Ⅱ)草刈ミカ《凹凸絵画 #51「ステートメント」》《#50》《#46》……038-039
      17(Ⅲ)エレナ・ノックス《Canny》《Occupation》……040-041
      18(Ⅲ)株式会社日立製作所研究開発グループ《AIによるシステムの知能化:ブランコデモ動画》……042-043
      19(Ⅳ)ミカエル・シュプランガー《Language Games》……044-045
      20(Ⅳ)銅谷賢治とスマホロボット開発チーム《ロボットは自分の目標を見つけられるか?》……046-047
      21(Ⅲ)名古屋大学佐藤・松崎研究室 きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ 《コンピュータが小説を書く日》《私の仕事は》……048-049
      22(Ⅳ)松澤 宥《量子芸術宣言》《方便 九》《題名不詳》……050-051
      23(Ⅰ)塚田 稔《ザクロの乱》……052-053
      24(Ⅱ)馬場省吾《2入力NANDゲートによる論理回路》……054-055
      25(Ⅳ)アイ(チンパンジー)《無題》、カンジ(ボノボ)《無題》、クロエ(チンパンジー)《無題》、パル(チンパンジー)《無題》、パン(チンパンジー)《無題》、ポポ(チンパンジー)《無題》……056-057
      26(Ⅱ)喜舎場盛也《無題》……058-059
      27(Ⅱ)豊嶋康子《スピログラフ》……060-061
      28(Ⅳ)川野 洋《Red Tree》《題名不詳》……062-063
      29(Ⅱ)平間貴大《対象物までの距離》……064-065
      30(Ⅱ)新国誠一《伝達9》《姦》《川または州》《闇》《幻》《反戦》《悲歌》《点滅》《淋し》《無残》……066-067
      31(Ⅱ)土田政一郎《手紙》……068-069
      32(Ⅱ)篠原資明《滝の書》……070-071
      33(Ⅳ)谷 淳 +ロドリゴ・ダ・シルヴァ・ゲラ《Dimitri》……072-073
      34(Ⅲ)人工知能美学芸術研究会《ディープ・レンブラント・ドリーム 1》……074-075

    • ■音楽……077
      音楽/コンサート 人工知能美学芸術コンサート……078-079
      三輪眞弘「形式言語による“詩”」……080-081
      古川 聖「機械美学音楽コンサート報告」……082-083
      平石博一の環世界音楽……084-085
      田中 翼「非特化型作曲AIの構想:現象学的音楽聴取および作曲者の意識のモデル化に向けて」……086-087
      杉浦 洋(ヨーコ・スギウラ・ナンカロウ)「コンロン・ナンカロウの思い出」……088-089
      足立智美「即興する人工知能」……090-091

    • ■研究……093
      研究/シンポジウム 人工知能美学芸術シンポジウム……094-095
      畒見達夫「計算機による計算機のための美学・創造・芸術 - 進化芸術学に向けて」……096-097
      マイク・タイカ「ニューラルネットワーク:芸術の新しい可能性」……098-099
      塚田 稔「脳と人工知能と芸術」……100-101
      佐藤直行「“意味”をつくるコンテクストの記憶の神経機構」……102-103
      ミカエル・シュプランガー「自律的な意味創出。ロボットは自らの言語を生み出すことができるか?」……104-105
      松原 仁「コンピュータにとって意味とは何か」……106-107
      高橋恒一「人類を再発明するために必要なこと」……108-109
      中ザワヒデキ「“機械美学/機械芸術”に至る道程」……110-111
      ロルフ・ファイファー「ロボットとの生活 - ロボット/AI 誇大広告への対応」……112-113
      岡田浩之「“プロジェクションサイエンス”による脱身体化された認知への試み」……114-115
      栗原 聡「人工知能開発における西洋的・東洋的モノの見方による違いとは?」……116-117
      銅谷賢治「自律学習ロボットは何の夢を見るか」……118-119
      池上高志「AIとALIFEの爆発的な流れから、人間性の成立について」……120-121
      金井良太「意識と知能と生命は同じか?」……122-123
      中垣俊之「単細胞粘菌の行動と賢さの接点を想う」……124-125
      秋庭史典「美学の役割と芸術の問い」……126-127
      久保田晃弘「AIと共有可能な、新しい種類の美学」……128-129
      エレナ・ノックス「オルタ VS ディープ・ビリーフ:御神籤」……130-131
      谷 淳 「意識・自由意志についての構成論的理解:脳的ロボット研究から」……132-133
      齋藤亜矢「絵を描く心の起源を探る」……134-135
      櫛野展正「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」……136-137
      藤井雅実「AIは死の欲動を実装できるか?」……138-139

    • ■メディア……140
      高橋恒一・草刈ミカ・中ザワヒデキ「特集“AIと美学・芸術”にあたって」……140-141
      秋庭史典「“人工知能美学芸術展”の意義」……142-149
      草刈ミカ「表紙解説:Deep Rembrandt Dream 2」……150-151
      ソフィー・プロダロ「人工知能に芸術を」……152-153
      中ザワヒデキ「レンブラント・ロボットを待ちながら:AIによる芸術創造が可能になるには何が必要か?」……154-156
      AI美芸研シンポジウム 全体討論の様子……157
      中ザワヒデキ・草刈ミカ 対談:「人工知能美学芸術展」をめぐって……158-171
      コラム:銅谷賢治「人工美学芸術展 in OIST を振り返って」……170
      人工知能美学芸術研究会・年譜……172-173
      人工知能美学芸術研究会・メディア掲載……174